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マスゴミ

 投稿者:日本  投稿日:2017年 7月18日(火)13時49分38秒
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  松居一代報道にみるテレビの“残念な部分”~「マスゴミ」の誹りを受けないために~
鈴木祐司  | 次世代メディア研究所長/メディアアナリスト/津田塾大学研究員
7/18(火)

船越英一郎・松居一代夫妻に関する話題が、この二週間ずっと熱い。
松居氏がネット上で夫・船越氏を非難し始めたのは6月末。その後7月4日から動画も動員されたために、スポーツ紙・テレビ・週刊誌が取り上げるようになった。

テレビで最初にこの問題を報じたのは、7月4日のフジテレビ『直撃LIVEグッディ!』。この段階では動画はまだアップされていなかったが、6月27日の氏のブログ「1年5か月前から尾行されている」以降のミステリアスな内容と、心配する母親のインタビューを紹介しつつ、トラブル発生の状況を伝えた。

その日の夜11時、松居氏は21秒の動画をアップした。
「大変なことが起きたのです。週刊文春に騙されたのです。本当にひどい。助けてください」
刺激的な発言が、極めて異様な雰囲気の中で行われた。その直後に10分38秒の本編動画もアップされ、異常な状況が多くの人々に晒され始めた。

急増したテレビ報道

翌5日から、各局の複数の番組による報道合戦が始まった。
フジテレビ『めざましテレビ』『ノンストップ』『バイキング』『直撃LIVEグッディ!』、TBS『ビビット』、日本テレビ『ミヤネ屋』などだ。
この日の総扱い時間は2時間半以上。前日比で一挙に10倍に増えた。
さらに6日には、参戦する番組が倍増した。TBS『はやドキ!』『あさチャン!』『ゴゴスマ』、テレビ朝日『グッド!モーニング』『羽鳥慎一モーニングショー』『ワイド!スクランブル』、日本テレビ『スッキリ!!』、フジ『とくダネ!』などだ。総扱い時間も5時間以上とさらに倍増した。
以後もほぼ毎日1~4時間の報道が続き、2週間目の17日(月)でも3時間半以上。二週間で35時間に及ぶ分量となった。

現代はインターネットのお陰で、誰もが簡単に情報発信できるようになった。表現手段が増え、情報伝達の可能性が広がったこと自体は喜ばしいことである。
ところが同時に負の側面も目立つ。ヘイトスピーチ・違法なコンテンツ公開・公序良俗に反した表現・他者を陥れる発信などである。
今回の松居氏の発言は、もともと夫婦の問題である。なのにインターネットを利用して、自分に有利にことを運ぼうとする氏のやり方は、決して褒められたものではない。
それでも氏がアップした数々の動画は、数十万から百数十万人に視聴された。一定程度の影響力を及ぼすことに氏は成功したのである。

テレビが一番の増幅要因

インターネット上ではSNSを活用すれば、1つの発信に何倍・何十倍・何百倍の影響力を持たせることが可能だ。個人の力を増幅できる仕組みだ。それでも通常は、数万・数十万から多くとも数百万アクセス止まりが現実だ。しかも、そこまで広がるには相当な時間を要する。

ところが今回は、松居氏の動画を連日多くのテレビ番組が取り上げ、短期間に数千万人が視聴した。
仮に1日10回、10日間で100回露出したと仮定しよう。1回平均500万人が視聴したとすると、のべ5億人が見た計算になる。つまり松居氏がアップした動画は、ネットだけなら数百万人の視聴に留まるが、テレビが繰り返し露出したことで、少なく見積もっても二桁多い人の目に触れたのである。

テレビに歯止めはあるか?

インターネット広告の世界は出稿者が数百万におよび、実に多様で膨大な量の広告が出ている。クレジットカードさえあれば誰でも広告を掲載できるからである。
ところがテレビ広告の出稿は、数百社程度に限られている。広告には厳しい考査が伴い、合格しない広告は出せないよう仕組みだからである。

コンテンツについても、同様のことが言える。
ネットの世界では誰でも簡単に発信でき、同時に問題のあるコンテンツがたくさんある。これらの不適切なサイトに自社の広告が掲載されてしまうため、最近ネット広告から撤退する大手企業や公的団体が増えている。

ではテレビの番組内容は本当に大丈夫だろうか。
もちろん各局がチェックシステムを持ち、見識を以って放送しているので、ネットと比べたらはるかに質は担保されている。
しかし今回の松居一代報道を見る限り、問題なしと断言できるだろうか。
松居氏がカメラ目線で訴える動画を見ると、本人が心の病に陥っている可能性を感じさせる。仮にそうでないとしても、明らかに常軌を逸した行動だ。動画を制作する以上、他者の力を借りているはずだが、彼女の暴走を常識で諭し留めてくれるような関係者がいなかったと推察される。

さらに言えば、松居氏は夫婦の問題を根拠薄弱なまま公にしているが、社会的な存在たる夫・船越氏の名誉を著しく傷つけている可能性がある。こうした影響を考慮すると、軽々にテレビで紹介できる映像ではない。
にもかかわらず、今回は二週間で35時間強も同テーマは放送された。この事実を以って言えば、今回は良識的な歯止めが機能しなかったケースかも知れない。

局や番組によって異なる対応

もちろん、テレビ全体が皆一緒だったわけではない。
例えばNHKとテレビ東京は、同問題を一切取り上げなかった。局別で言えば、先行したフジテレビが第1週で圧倒し、二週間で約13時間と全体の3分の1強を占めた。
次に多かったのは12時間半ほどのTBS。7時間弱の日本テレビ、2時間半のテレビ朝日が続いた。

最も時間を割いた番組は、6時間弱のTBS『ビビット』。7月5日(水)以降、平日は毎日放送し続けた。
次に多いのが4時間強のフジ『直撃LIVEグッディ!』。最初に報道し、平日はほぼ毎日扱っていた。
3番目は日テレ『ミヤネ屋』。4時間弱に及ぶ。
他にも、フジ『バイキング』『とくダネ!』などが多いが、これらは全てワイドショーだ。日頃から芸能・ゴシップを一つの柱にして、視聴率競争に臨んでいる番組群だ。

ここで気になるのは、朝5~7時台のニュースワイドの時間帯、あるいは夕方ニュースの時間帯だ。
まず朝では、フジ『めざましテレビ』とテレ朝『グッド!モーニング』が頻度も高く、総取扱時間も長い。TBS『あさチャン!』は回数も時間も少ないが二週間で3回扱っていた。ところが日テレ『ZIP!』は一度も触っていない。番組のテイスト・方針の問題もあるだろうが、見識の差を感ずる結果である。

さらに夕方の帯ニュースの時間帯。短時間ではあったが、フジ『みんなのニュース』が5日(水)から7日(金)まで3日連続で扱っている。報道すべき価値とは果たして何だったのか、疑問が残る。

視聴者の見方

番組の担当者は、“視聴者が興味を持つネタこそ取り上げる価値がある”とよく言う。そして判断基準として、唯一現実的な指標=視聴率を持ち出すことが多い。
ところが視聴率では、性年齢は見分けられるが、どんな属性・傾向の人がどう感じながら見ているかまでは正確に把握できない。あくまで量的な評価に過ぎず、質的評価は保証しない。「勝てば官軍」的に、量的評価が高い番組が良い番組と見なされて来たのである。

ところが人々の価値観や社会の傾向は絶えず変化している。
本来プライベートな問題を平気で公表してしまう松居氏の異様な言動は、確かに人々の耳目を集めやすい。相変わらず視聴率に貢献しているかも知れない。それでも中長期的な視点で考えると、個人の異常な状況を配慮なしに晒す番組の姿勢に、離反していく視聴者は着実に増えている。

人々のテレビの見方を質的に調査しているデータニュース社「テレビウオッチャー」には、少なからずこうしたモニターの意見が出てきている。

5日(水)の『ビビット』を見た58歳女性は、「松居一代取り上げる必要ある?夫婦間の問題をわざわざ取り上げるほどのこと?テレビを消した」と答えている。視聴満足度は最低の1だった(5段階評価)。

同じく5日(水)の『直撃LIVEグッディ!』を見た37歳女性は、「松居一代のユーチューブ見たけど、怖い。情緒不安定でしょう」と回答。次回は「たぶん見ない」の評価2を記していた。

5日(水)から7日(金)にかけて、松居問題にたっぷり時間を費やた『ミヤネ屋』に対しても、否定的な意見が散見される。
「松居一代の告白問題、個人的事柄をここまで騒ぎ立てるのは、如何なものかと思う」と答えた65歳男性は、10日(月)以降、同番組を視聴しなくなっていた。
他にも「離婚の話ばかりで面白くなかった」(59歳女性・満足度最低)、「松居一代の話題は本当につまらない」(40歳女性・満足度3)など。
“他人の不幸は蜜の味”と、これまでは有名人のスキャンダルをワイドショーは多く扱って来た。ところが今は、そうは受け止めない視聴者が出てきているのも事実のようだ。

ちなみにニュース番組で同問題を扱った『みんなのニュース』に対しては、辛辣な声が寄せられていた。
「相変わらず、この局らしい松居一代などの芸能下ネタが目立つ。他のニュースの扱いが良いのだから残念」と答えた64歳男性の満足度は2。翌日から同番組を視聴しなくなっていた。

制作現場の意識改革は可能か?

番組の制作現場は、視聴率の1分ごとの動向と各コーナーの関係や、裏番組の動向などをかなり細かくチェックするようになっている。「数字もってる企画」「数字もってるタレント」を分析し、何とかヨソから数字をもってこようという努力が、かなりされるようになっている。

ところがこれらだけで十分な対応と筆者は思わない。
本音は視聴率やスクープが目当てだが、表向きは報道の自由を大義名分にし、行き過ぎた取材や腑に落ちない表現が散見されるからだ。かくして“マスゴミ”などの蔑称が使われるケースが増えている。

今回も「視聴者の関心に応える」という建前と、「視聴率が欲しい」という本音が前提にある。そして「異常な私的部分を公に晒す」ことへの疑問が十分に説明されないまま、大量の番組が放送されている。
これではネットの世界を批判できない。同じ穴の狢とみる人は少なくないだろう。

ネタが突出していればいるほど、なぜ放送するのか、説得力のある論理武装が必要だ。
もしそれをやり切れないのなら、反発の原因を取り除く努力が必要だ。今回で言えば、安易に取り上げないのも一つの見識だ。
しかし現実は、露出量が二週間で35時間に及んだ。相変わらず“勝てば官軍”の匂いがする。
こうした残念なテレビの側面は、紹介した「テレビウオッチャー」モニターの声にあったように、「マスゴミ」の誹りを増幅しかねない。
短期的な数字ばかりを追い求めず、持続可能な姿勢も大きな意味を持つ時代になったことを、制作現場には一度立ち止まって、考え直してもらいたいものである。
 
 
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